《第三章》苦しんでいる霊 / 天国と地獄《Ⅰ》

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(1)オーギュスト・ミッシェル――金持ちの青年

 ル・アーヴルにて、一八六三年。
 オーギュストはお金持ちの青年で、物質的な生活を、ただそれだけを、大いに楽しんだ。頭は良かったのだが、まじめなことがらにまったく関心がなかった。よこしまなところはなく、むしろ善人といってもよかったので、遊び友達からは愛されていた。社交界での付き合いに生きたと言ってよいであろう。悪を犯すこともなかった代わりに、善を行うこともなかった。
 ある日、乗っていた馬車が崖(がけ)から転落して、あっけなく命を失った。
 死後、数日してから、間接的に彼のことを知っていた霊媒によって初めて招霊され、それから徐々に日を追って、次のようなメッセージを降ろしてくれた。

 三月八日

 「まだ完全に体から離れていません。それに……まだうまく話すことができません。馬車がいきなり転落して私の体が死んだのですが、そのおかげで私の……霊はひどく混乱しました。これからどうなるのかが分らず、そのために不安で……不安でしかたありません……。死の瞬間に私の体が味わった恐るべき痛みも、いま私が感じている苦痛に比べれば、何ほどのこともなかったのです。
 神が私を許してくださるように、どうか祈ってください……。ああ、何という苦しみ!
 ああ、神様、ご慈悲を! ああ、苦しい! それではさようなら」

 三月十八

 「先日、来ましたが、そのときは、うまく話せませんでした。いまでも、まだ、通信するのには困難があります。
 あなたしか、お願いできる霊媒がいないので、どうか、神様が、現在の混乱から私を救ってくださるように、私のために祈ってください。
 もう肉体は苦しんでいないのに、どうして、私はまだこんなに苦しいのでしょうか? この恐ろしい苦しみ、耐えがたい苦悩は、どうして、これほど長く続くのでしょうか? 祈ってください。神様が私に休息をくださるように、どうか祈っていただきたいのです。
 ああ、何という不安でしょう。私はまだ体から離れられずにいます。どこに行けばいいのか、よく分りません。私の体がそこに見えます。ああ、どうして、いつまでもこんなところにいるのだろう?
 私の遺体に向かって祈ってください。そうすれば、私は体から離れることができるかもしれません。神様は、きっと、私を許してくださるだろうと信じています。
 あなたがたのまわりに霊たちがいるのが見えます。私は、彼らのおがげで、あなたがたに話ができるのです。
 ああ、どうか、私のために祈ってください」

 四月六日

 「あなたがたに祈っていただきたくて、こうしてまた舞い戻ってまいりました。私の遺体があるところに行って、私の苦悩が安らぐよう、全能なる神に祈っていただきたかったのです。
 ああ、苦しい! ああ、何という苦しみ!! どうか、どうか、遺体のある場所に行ってください。そうして、私を許してくださるよう、神様に祈ってください。そうすれば、心が安らぐと思います。しかし、いまのところは、かつて私を葬(ほうむ)った場所に、絶えず戻らざるを得ないのです」

 オーギュストの霊が、どうして「墓の前に行って祈ってくれ」と言うのかが分らなかったので、この霊媒はそうしなかった。しかし、あまりにも繰り返し懇願(こんがん)されるので、ようやくそうすることにした。すると、墓の前で次のメッセージを受け取った。

 五月十一日

 「あなたを待っていました。私の霊が体に縛りつけられている場所にあなたが来てくださり、寛大な神様に祈ってくださるのを待っていたのです。
 どうか、私の苦悩を和らげてくださるよう、神に祈ってください。あなたのお祈りによって、私はとても楽になるのです。早く、早く、祈ってください。お願いです。
 私の人生がどれほど本来の姿からずれていたかが、いまではよく分ります。私の犯した過ちが何であるかも、よく分ります。
 私は地上で無用な存在として生きてしまいました。自分の能力を人のためにまったく生かさなかったからです。私は、財産を、自分のためだけに、つまり、自分の欲望を満たし、自分に贅沢(ぜいたく)をさせ、虚栄心を満足させるためだけに使ってしまいました。体が喜ぶことだけをして、魂が喜ぶことを何もしませんでした。
 地上で犯した過ちゆえに、いまだに苦しむ私の魂の上に、はたして神様は慈悲の光を降ろしてくださるのでしょうか?
 神様が私を許してくださるように、どうか祈ってください。そうすれば、いま感じているこの苦しみから解放されると思います。
 私のために、ここまで祈りに来てくださったことに心から感謝します」

 六月八日

 「私が、神の許しを得て、こうしてあなたがたに話ができることを、感謝しております。私は、自分の過ちに気がつきました。どうか神様が許してくださいますように。どうか、あなたは信仰に従って生きてください。そうすれば、私がいまだに手に入れていない安らぎを、必ず手に入れることができるはずです。
 祈ってくださって、本当にありがとうございました。それでは、さようなら」

 「墓の前に行って祈ってくれるように」との、霊の執拗(しつよう)な依頼は、まことに不思議なものであったが、この霊が、生前、まったく物質的な生活を送ったために、死んでから、霊と肉体との結びつきが極めて強く、霊子線がなかなか切れず、分離が非常に困難であったということを思えば、理解することが可能である。
 遺体の近くで祈ることによって、遺体に幽体のレヴェルで働きかけることとなり、その結果、分離を容易にするということであったのだ。
 亡くなった人の遺体のそばで祈るということが広く見られるが、これは、人々が、無意識のうちに、そうした効果を感じているからではないだろうか。この場合、祈りの効果は、精神と物質の両方のレヴェルで表れるわけである。

(2)ウラン王太子――ロシアの貴族



(3)フェルディナン・ベルタン――海難事故の犠牲者



(4)フランソワ・リキエ――けちくさい独身の中年



(5)クレール――極端なエゴイスト



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